十二支のお話②
(前回の続き・・・)
神様より「元日の朝、山のてっぺんに来てください。12番目までにやって来た動物を、交代で1年の王様にします。早いもの勝ちだよ!」と言われた動物たち。大晦日になり動物たちは騒ぎながら山に登ってきました。神様は山のてっぺんにからその様子を見守っています。さて、最初に神様の前に現れたのは……
「ぼくです!」ねずみが神様の前に飛び出しました。
「そうか、ご苦労、ご苦労。ねずみが一番じゃな。二番は牛か。お疲れ様」
牛は目をぱちくりさせました。
「あれぇ、ねずみ君、いつの間に……」どうやら、自分の背中から勢いよくねずみが飛びおりたことに気づいていないようです。
「まあ、いいか」とおおらかにつぶやきました。
さて、次々と動物たちが山のてっぺんにたどり着きます。
3番は、猛ダッシュしてきた虎。
4番目は、わき目もふらずにぴょんぴょん跳んできたうさぎ(カメとの競争でこりたのでしょうか?)
5番目は、優雅に空を飛んできた龍。6番目はするする地面をはってきたへび。
7番目は……「もうダメだー。ボクはここでおりるよ」「何言ってるんだ!もう少しでてっぺんじゃないか。頑張れ!」
くじけそうな羊を、馬が励ましています。何とか2匹いっしょにてっぺんにたどり着きました。
「馬くん、ありがとう。君のおかげだ。ボクは後でいいから、先にゴールしてよ」
「いいのかい?じゃあ、遠慮なく」こうして、馬が7番目、羊が8番目になりました。
「コケコッコー、いいかげんにやめなさい!ケンカしてると間に合わないわよ!」
「キッキー、お先に失礼!」「負けるか!」ニワトリ、サル、犬の3匹が、大騒ぎしながら山のてっぺんにやって来ました。
「おお、来たか。よしよし。9番目がサル、10番ニワトリ、11番を犬としよう。サルと犬を隣にすると、またケンカをするからな」
おやおや。神様にぜんぶ見られていたようです。
さて、最後にやって来たのは……
ごおぉぉぉ!!!砂けむりを上げながら、猪突猛進してきたイノシシです。
「いやあ、間違って違う山に登ってしまったんですわい!」イノシシは大声で、神様に報告しました。
こうして12匹の動物が山のてっぺんにそろいました。神様を囲んで、元日のお祝いは夜おそくまで続きました。
さて、次の日。
猫は昼寝からさめて、そろそろ神様のところへ行こうかな、と大きくのびをしました。
歩き始めると、道ばたでタヌキが眠っています。
「おーい、タヌキくん。君は山のてっぺんに行かなくていいのかい?」猫はそう声をかけました。
タヌキは眠そうに目をあけて「なーに言ってるの。競争は昨日だよ。ボク、面倒くさくなって途中で帰ってきちゃったんだよ……」
そう言って、また眠ってしまいました。この時はじめて、猫はねずみにだまされたことに気がついたのです。
こうして十二支の順番は
「子(ねずみ)、丑(うし)、寅(とら)、卯(うさぎ)、辰(たつ)、巳(へび)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(いのしし)」
に決まりました。ねずみのせいで十二支にはいれなかった猫は、それ以来ねずみを見ると怒って追いかけるようになったそうです。
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十二支って「ね、うし、とら、う、たつ、み……」あたりで、何となく先があやしくなりませんか?
このお話を思い出せば、「馬と羊は仲良しで、羊が馬に先をゆずった」
「サルと犬は仲が悪いから、間にニワトリが入っている」と覚えられますね。
それにしても、悪がしこいのはねずみです。ライバルを減らすために猫にウソを教え、まじめな牛の背中で眠って山のてっぺんに着いて、一番に神様の前に飛び出すなんて。
さらに深く考えると「牛が一番になるという、先見の明があった」「神様にでもウソをつく度胸がある」とも言えます。でも、もし牛が虎のように獰猛で、だまされた事に激怒したら。もし神様に、ウソを見破られてしまったら。
お話はどうなっていたでしょうか。
ねずみにだまされた猫はかわいそうですが、そもそも猫が自分で看板を見ていたら、日を間違うことはなかったでしょう。
なんだか、色々な事を考えさせられるお話ですね。
今わたしたちの周りには、TV、雑誌、インターネットなどさまざまな情報があふれています。ねずみみたいに悪がしこい力で話がゆがめられていないか?猫のように他人の話をうのみにしていないか?
私たちも時々、立ち止まって考えなければいけませんね。